「生き残るタレント」「消え去るタレント」その違いは何か? 元芸人のインタビュアー作家が見た生存競争の現実 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「生き残るタレント」「消え去るタレント」その違いは何か? 元芸人のインタビュアー作家が見た生存競争の現実

「生き残る人」が備えている才覚とは?

 

《ある若手と、長く残るベテランの差》

 最後に象徴的なエピソードを紹介します。

 ある年に、芸人のネタのコンテスト番組でいい成績を挙げた芸人にインタビューした際、欠伸をしたり、受け答えに覇気がなく、取材の仕事を軽くこなしてるのが見てとれました(担当マネージャーとの信頼関係があるので名前は言わないが)。忙しくなって眠いのはわかるが、私は「これはすぐ消えるだろう」とわかりました。結果、半年保たずにテレビから消えました(ライブなどでがんばっているのでしょうが)。

 テレビは取材と違って全力でやる、とその芸人は言うかもしれませんが、仕事によって力を抜く姿勢は怖いもので視聴者やスタッフにも伝わるものです。

 話はかわり、10年ほど前か、中村メイコさんにインタビューしました。お酒についての軽い内容でしたが、こちらが聞く必要もないくらいにいろんなお話をしてくださった。私としては美空ひばりさんのお話を聞きたくてもなかなか言い出せずにいた。しかし聞く必要もなく、中村さん自ら美空ひばりさんのエピソードを語ってくれて、さらに聞きづらい、亡くなられる直前のエピソードまで台詞入りで話してくれた。

 あれだけのベテランが、短いインタビューひとつに前もってお話を準備し、流れを作って話してくれた。私史上、最短のインタビュー時間で終わりました。長く芸能界にいる人はウサギを倒すライオンのごとく全力で仕事しますね。感銘を受けました。

 このようなエピソードはたくさんあるので、またの機会に書きます。

 

■「聞く、読む」がヒントに

 私の話が一般社会に適応できるかはわかりませんが、私が今思うに「自分が変化する」「自分のやれることを広げる」意欲があれば、残れる可能性が今より高まるのは確かです。

 変化する機会や、新たにやれることは、いたるところに転がっている。しかし「変化したい、自分の幅を広げたい」と意識してないとその機会やジャンルを見逃してるんだと、つくづく思います。見逃してることがあると気づけたのは、あらゆる芸人、タレントのインタビューをしてきたからです。

 人の話を「聞く、読む」ことが私には中年からの生き方のヒントになりました。

 

文:松野大介(作家)

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松野 大介

まつの だいすけ

1964年神奈川県出身。85年に『ライオンのいただきます』でタレントデビュー。その後『夕やけニャンニャン』『ABブラザーズのオールナイトニッポン』等出演多数。95年に文學界新人賞候補になり、同年小説デビュー。著書に『芸人失格』(幻冬舎)『バスルーム』(KKベストセラーズ)『三谷幸喜 創作を語る』(共著/講談社)等多数。沖縄在住。作家、ラジオパーソナリティー、文章講座講師を務める。

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